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現地取材アーカイブ

【現地探訪】梓川三ダムの美しき要「水殿ダム」アーチ式堤体と純揚水発電の仕組みを現地解説

2026年8月 長野県松本市安曇(信濃川水系梓川)

水殿ダム全景

▲ 左岸側から望む水殿ダムの放物線アーチ堤体と直下の水殿発電所(スイッチヤード)

1. 水殿ダムの概要と「安曇三ダム」の連携

長野県松本市安曇、北アルプスの名峰を源流とする一級河川・信濃川(犀川)水系梓川の中流部に位置するのが「水殿(みずどの)ダム」です。東京電力(現・東京電力リニューアブルパワー)によって1969年(昭和44年)に完成した発電専用ダムです。

水殿ダムは、上流の巨大アーチダム「奈川渡ダム(梓湖)」、下流の「稲核(いねこき)ダム」とともに「安曇三ダム(梓川三ダム)」を形成しています。上流の奈川渡ダム(安曇発電所:最大出力62.3万kW)で発電に使われた放流水を受け止める下部調整池であると同時に、自らも直下の水殿発電所(最大出力24.5万kW)の上部調整池となる、巧妙な連動式純揚水発電システムの中心核を担っています。

水殿ダムの基本諸元

型式: ドーム型アーチ式コンクリートダム

堤高: 95.5 m

堤頂長: 343.3 m

堤頂標高: EL. 898.5 m

総貯水容量: 15,100,000 m³

有効貯水容量: 4,000,000 m³

管理者: 東京電力リニューアブルパワー株式会社

人造湖名: 水殿調整池

水殿ダムの案内

▲ 左岸天端入口に佇む「水殿ダム」の石造り親柱・金属銘板

2. 構造的特徴:優美な放物線を描くアーチ堤体

水殿ダムの型式は、両岸の堅固な岩盤を利用して水圧を山体へと逃がす「ドーム型アーチ式コンクリートダム」です。堤高95.5m、堤頂長343.3mに及ぶ薄いコンクリートの曲面が、深いV字谷の地形に見事に架け渡されています。

堤体のすぐ直下(減勢部)には水殿発電所および屋外変電設備(スイッチヤード)が直接配置されており、ダムと発電所が一体となった機能美あふれるレイアウトが特徴です。

水殿ダムの上流側

▲ 上流側天端高欄と水殿調整池に浮かぶ流木止めフェンス(網場)

水殿調整池の湖面

▲ 急峻な山並みに囲まれた水殿調整池の穏やかな水面

水殿ダムの設備近景

▲ 堤体直下に直結する水殿発電所の放流ゲートと変電設備近景

3. 湖面管理と急峻な山間インフラの保全

水殿調整池(ダム湖)の上流側には、北アルプスの深い原生林から流出してくる倒木や流木を捕捉するための網場(あば)と作業用ボートが配備されています。これらは水車発電機への異物混入を防ぎ、電力の安定供給と河川環境の健全性を維持するために不可欠な設備です。

左岸天端の親柱には重厚な「水殿ダム」の金属銘板が嵌め込まれており、急激な水位変動に対する危険告知看板とともに、厳密な保安管理体制が維持されています。

上流から流入する流木を収集・管理する作業ボートと網場

▲ 上流から流入する流木を収集・管理する作業ボートと網場

左岸入口の親柱銘板と急激な水位変動を警告する安全標識

▲ 左岸入口の親柱銘板と急激な水位変動を警告する安全標識

4. 現地アクセスと周辺の山岳景観

水殿ダムは松本市街から上高地・乗鞍方面へと続く国道158号の沿道に位置しています。梓川の深い渓谷美と連なるトンネル群を抜けるルート上にあり、四季折々の山岳景観が広がります。

現地での注意事項: 梓川沿いは急峻な山岳地帯のため落石対策工事や道幅の狭いトンネルが点在します。見学時は指定の駐車スペースを利用し、天端付近の立ち入り制限エリアには侵入しないよう注意が必要です。

水殿ダム周辺景観

▲ 水殿ダム下流側、稲核ダムへと続く梓川の深いV字渓谷

まとめ:リアルタイムデータと現地体験

深夜の余剰電力を利用して水を汲み上げ、電力需要ピーク時に一気に放流・発電する揚水発電。水殿ダムの優美なアーチ堤体と直下の発電施設は、日本の高度経済成長期から現代の再生可能エネルギー運用に至る電力インフラの重要性を物語っています。

水殿ダムの現在のステータスを見る

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